事例紹介

日本初開催、第10回国際応用数理学会議 (ICIAM2023)を振り返る

2023年820日~25日、早稲田大学にて、第10回国際産業数理・応用数理会議 (ICIAM2023) が開催されました。国際産業数理・応用数理会議は4年に一度開催される応用数学の国際研究集会ですが、今回は初の日本開催であり、さらに東京での待望の会議開催ということもあり、約100の国・地域から5,500名(オンライン1,500名を含む)が参加しました。
会議終了後、実行委員長である大石進一先生(早稲田大学理工学術院 応用数理学科教授)に本会議を振り返っていただきました。

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会議の成果や本会議ならではの取り組みをお聞かせください
私の目標は次世代に世界に出ていく良い機会を作ることです。数学界はシャープな専門性を持つ分野のため、同じ内容を研究する人は世界に数人しかいないこともあります。ですので、ミニシンポに参加し、若い研究者にネットワークを広げてもらいたいと考えていました。この会議では、100パラレルの分科会を開催しましたが、オーガナイザーから「大成功だった」と連絡をいただきました。これを実現できたことが会議の最も大きな成果でした。

実現にあたって、大いに役立ったのがテクノロジーを支援する東京観光財団の助成制度です。
『ハイブリッド型会議等開催資金助成』の支援により、分科会の完全ハイブリッド化が実現しました。100パラレルの分科会の全会場でZoom Webinarで同時配信されました。管理センターには4K画質の65インチモニター8台と高スペックパソコン8台を活用して、Zoom配信に同時アクセスが可能な専用インターネット回線を準備できたため、通常であれば100台のパソコンと100人の人員でモニタリングが必要なところ、大幅な効率化に成功しました。

もう一つ、東京観光財団の『次世代型MICE開催資金助成』の支援を受けて、ポスターセッションで新たに取り組んだことがあります。セッション終了後、研究発表者が不在の環境でも、会場内でロボット(今回利用したのはtemi)によるプレゼン解説動画を流すことで、まるで研究者本人がその場で発表しているかのような仕組みを作りました。また、オンライン参加者はセッションの配信は見ることができてもセッションに参加することができないという課題解決として、temiにカメラを装着し、temiを介してオンライン参加者がポスターセッションをリアルタイムで聴講し、発表者とその場で議論できるようにしました。会場にいるような臨場感に加え、双方向のコミュニケーションを実現でき、当初の予想を超える効果がありました。

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テクノロジー関連の支援の他にも、文化体験プログラム、東京観光ツアーの提供、観光ボランティアの派遣等、東京観光財団によるさまざまな支援により、会議全体の成功へとつながりました。

また今回は、コングレスバッグではなく風呂敷を配布しました。さらに、風呂敷の使い方を文化体験プログラムとして紹介することで、「何度も繰り返し使うことのできるサステナビリティ性」と、「日本の伝統文化」の両方を参加者に伝えることができ、参加者には大変好評でした。

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PCOを入れず実行委員会と学生ボランティアが主体となる運営は意欲的な試みでしたね

論文投稿システムは、早稲田大学のベンチャー企業に依頼し、大学の関連会社に、会場予約、参加者のビザ対応、リーガロイヤル東京の交渉、招待講演者へ連絡・調整等を依頼しました。100パラレルの分科会の会場運営は、500名の学生アルバイトの方にお願いしました。スライドを事前に集めずにセッションを実施したことも、運営を簡略化できた要因ではないかと思います。何より優秀な助手の先生と若手研究者たちからなるチームの結束とICIAM2023を成功させたいというチームメンバーの気概が原動力だったのではないかと感じています。

地域へのPRも積極的に展開されたそうですね

周辺住民や地域に対しても会議についての説明やアピールが必要ではないかという議論が起きたことから、ラッピングバスでの市民公開講座の告知や周辺の商店街での大会フラッグの掲出を実施しました。市民公開講座では、会議のシンボルでもある『折り紙』をテーマとした講演を行い、海外の会議参加者も多数参加し、交流の良い機会となりました。

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これから東京で会議を開催するにあたってのメッセージをいただけますか
若い研究者にネットワークを広げてもらう、次世代の人たちが世界に出ていく良い機会を作る、世界から来る人にも良い機会を得てもらう、このような場を作ることが世界における日本の役割でもあると考えます。自国開催の具体的な成果は、数年後の国際研究におけるワークショップや共同研究の成果としてみえてくるのではないでしょうか。専門分野において、世界の研究者に新しい研究や発表を広く知ってもらうためには、大規模な会議の開催が必要です。また、国際会議の開催には、その環境でできる方法をみつける能力が必要で、さまざまな工夫、『アドリブができる』ことが開催する人に必要な要素ではないかと考えます。

東京観光財団では、今後も東京での国際会議開催のメリットや東京の魅力を発信していきます。